【カウンセラーのひとりごと】焦りの正体
焦りという感情には、奇妙な性質がある。
焦りという感情には、奇妙な性質がある。
それは行動を加速させるようでいて、じつは思考を鈍らせる。
一見、前に進もうとしているようで、実際には今ここから心を遠ざけてしまう。
カウンセリングの現場でも、焦りを抱えてやってくる人は多い。
早く変わらなきゃ!
こんな自分を終わらせたい!
他の人はもっと前に進んでるのに!
そんな言葉とともに。
話を聴いていくうちに見えてくるのは、焦りはたいてい「未来への恐れ」と「過去の傷」の両方に引っ張られているということ。
未来への恐れとは、
このままの私では価値がないまま終わってしまうのではないか、
遅れてしまう、取り残されてしまうという不安。
過去の傷とは、
がんばって認められようとしたのに届かなかった、
立ち止まったら、誰にも見てもらえなかった、
そんな記憶の痛み。
本来、焦りとは感じきることでしか収まらない。
焦っちゃダメ、落ち着こうでは、表面をなでるだけに終わってしまう。
もっと奥にある、「焦らなきゃいけないと思い込んだ理由」に光をあてていく必要がある。
ある人は、幼いころに親の期待に応えることが愛される条件だった。
ある人は、失敗を笑われた記憶が今も胸に焼きついている。
またある人は、がんばっても報われないなら、生きてる意味がないと、深い諦めを抱えていた。
焦りとは、コントロールの感覚を失った心が、自分の存在価値をなんとか保とうとする最後の手段なのかもしれない。
私はカウンセラーとして、焦りに飲まれている人に止まりましょうとは簡単に言えない。
その人の焦りが、どれだけの痛みと結びついているかを、まずは一緒に感じるのだ。
焦りの奥にある、叫び声のような私を見てという感情に、耳を澄ませる。
焦りが悪いわけじゃない。
ただ、それがどこから来ているのかを知らないまま動き続けると、人は自分をすり減らしてしまう。
焦っている心には、休息ではなく、理解が必要なのだと思う。


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