こんにちは。カウンセリングサービスの大野愛子です。
カウンセリングでは夫婦問題のご相談を多くいただきます。今日はこの夫婦ケンカに潜む「投影の心理」について取り上げてみます。
カウンセリングでは夫婦問題のご相談を多くいただきます。今日はこの夫婦ケンカに潜む「投影の心理」について取り上げてみます。
夫に文句を言われると、私も我慢できなくなり言い返してしまうことがあります。すると、さらに夫が強く言い返してくるので、最終的にはお互いに罵り合うことになり、最悪な気分になります。夫はおそらく、モラハラ気質なのだろうと思います。
私の父もモラハラっぽいところがあり、自分の言うことが絶対的に正しくて、逆らうことは許されませんでした。父が怒り出すと手がつけられないので、母も私もずっと我慢してきました。そのせいか、夫が大声で怒鳴るとか、暴言を吐くとか、そういうことにとても嫌悪感を感じます。
以前夫には「もう少しやさしく話してほしい」と頼んだこともありますが、「お前が俺を怒らせるから悪いんだ」と取り合ってもらえませんでした。今となっては、この人と結婚したことは間違っていたのかもしれないと後悔しています。こんな私になにかアドバイスをいただけないでしょうか?
K子さん、こんにちは。カウンセラーの大野愛子です。
夫婦ケンカに悩んでいるとのことですが、「もう我慢の限界」という心の叫びが聞こえてくるような気がします。
いちばん理解し合いたいご主人とケンカという戦争状態にあるのだとしたら、それはつらいだろうと思います。K子さんの心に一日でも早く平和が訪れますように、お力になりたいと思います。よろしくお願いします。
K子さんの身の上に起こっている状況を説明するために、ひとつの心理法則について少しお話をしたいと思います。それは「パートナーには親を投影しやすい」という法則です。
カウンセリングでは、パートナーとの関係性がうまくいかないというご相談をいただくときに、女性であればお父さんとの関係性を見つめ直していくことがあります。
なぜかというと、お父さんとの関係性に感情的なわだかまり、解消されていない怒り、傷ついたままの心の傷、心理的な距離感などがあると、それを投影(映し出される)関係性がうまくいかなくなることがあるからです。
パートナーシップにおいて、夫に父親を投影することはとてもよくあることですが、父親だけとは限りません。ときには母親を投影することもあります。
パートナーはいちばん親密な距離にいる人ですから、ありとあらゆる人を投影しやすくなります。両親だけではなく、きょうだいや元パートナーもそうですし、ときには自分自身をパートナーに映し出して見ていることもあります。
よくある夫婦ケンカに「私はあなたのママじゃないわ!」「何お前、子供みたいなこと言っているんだよ!」というセリフがありますが、まさにこれは「夫が妻に母親を投影し、妻が夫に父親を投影している」ということが起こっているからなのです。
ですので、K子さんのご相談を、カウンセラーとしてはこんな視点で見ている部分もあるのです。「結婚して1年、ケンカができるほど、ご主人と親密な関係性になってきたということでもあるんだな。心の距離感が近くなっているから、こういうことが起こっているんだな」と。
夫婦ケンカが嫌で悩まれているK子さんにしたら、失礼なことを言っていることは承知しているのですが、「ようやくケンカができるようになった」という見方をすることもできるのです。だって、K子さんはこう書いてくれましたよね。「父が怒り出すと手がつけられないので、母も私もずっと我慢してきました」と。
ずっと我慢をして飲み込んできたK子さんが、ご主人には我慢せずに言い返しているということは、それが良いとか悪いということは一旦傍におくとしても、意味があることなのだろうとカウンセラーとしては考えるからです。
そう考えてみたときに、K子さんが望んでいるのは「我慢をしなくていい関係性」であり、その先に見ているのは「お互いに理解しあえる関係性」なのかもしれないと想像するのです。

これは心理学的なもの見方ですが、K子さんは怒っているご主人に、お父さんを重ね合わせているのかもしれません。つまりご主人にお父さんを投影している。すると、お父さんに対して感じていた感情をご主人に対しても感じるようになります。
夫婦ケンカをしている時に感じている最悪な気分や嫌悪感というのは、ご主人に対してというよりも、かつてのお父さんに感じていた感情でもあるのかもしれません。
その頃の小さな女の子は、お父さんの怒りを全身全霊で丸かぶりをして、ただひたすら我慢するしか仕方なかったのでしょう。もし逆らおうものなら、お母さんもろともお父さんの怒りの炎で焼き尽くされてしまうからです。
そこにはK子さんの心の痛みがあります。お父さんに対して感じている大きな怒り、もっていき場所のない悔しさなど、それらの心の痛みがまだ残っているのかもしれません。
すると、抑え込んできた怒りを、お父さんを投影しているご主人に対してぶつけやすくなるのです。もしかしたら、ご主人に対する嫌悪感よりも、お父さんに対する嫌悪感のほうに翻弄されているのかもしれません。

「この人と結婚したのは間違いだったのかもしれない」とK子さんは書いてくれましたが、K子さんがこのご主人を選んだことにも、ちゃんと理由があることもお話しておきたいと思います。
モラハラっぽいお父さんを嫌いながらも、モラハラっぽい人をご主人に選んでしまう。「絶対にそんな人は嫌だ!」と思いながらも、なぜかそんな人を選んでしまうことがあります。
K子さんにとってはとても信じられない話かもしれませんが、そこには「お父さんを理解したかった、お父さんを助けたかった、そんな自分がいる」ということ。
子供にとって、お父さんお母さんは世界でいちばん大好きな人です。どんなに親が子供を嫌おうとも、子供から親を嫌うことはできないぐらいに大好きなのです。
だからこそ、親は子を平気でとんでもなくひどく怒ってしまうときもあります。どれだけ怒っても、子供が親を嫌いにならないことを、どこかでちゃんと知っているからです。
K子さんのお父さんが怒っているときは、どんな顔をしていましたか?とても苦しそうな顔をしていたかもしれないし、鬼のような顔をしていたかもしれないし、氷のように冷たい顔をしていたかもしれません。
子供はそんな親の顔を見て、なんとかしてお父さんを助けたいと思うようになります。大好きなお父さんだからこそ、なんとかして助けてあげたい。
でも、小さい子供の力で出来ることはわずかです。すると、子供の心には助けられなかったという失敗感と、なにもできなかったという無力感だけが残り続けます。
すると、大人になってパートナーを選ぶときに、無意識的にリベンジしたくなるのです。「今の私ならば、お父さんのことを助けてあげられるかもしれない!」と。
そういう無意識的な理由があると、「お父さんみたいな人は絶対に嫌だ!」と思いながらも、お父さんみたいな人を選ぶということが起こるのです。
ひとつめは、自分はとても愛情深い存在であることを受け取り直すこと。
K子さんが夫婦ケンカをしたときに怒ってしまうのは、「お父さんの気持ちを理解しようとしているからだ」ということがおわかりになるでしょうか?
怒っている人の気持ちは、自分の怒っている人になることで、身をもって理解をすることができます。K子さんはそうまでして、お父さんの気持ちを理解したいようです。
夫婦ケンカをして怒っている時の自分は、まるで昔のお父さんのようだといことがお分かりになるでしょうか?
「ああはなりたくないと思うと、ああなってしまう」という法則がありますが、ああはなりたくないと思うと、ああならない方法を知るためにああなっている人のことを理解する必要があります。
ああなっている人を理解するために一番手っ取り早い方法は、ああなってみることです。つまりは、自分もその人を同じ体験をしてみることです。
ああなっている人を理解するために一番手っ取り早い方法は、ああなってみることです。つまりは、自分もその人を同じ体験をしてみることです。
心理学ではこれを追体験といったりもしますが、自分のなかにお父さんを取り込むわけです。そうまでしてお父さんのことを理解したかったのだ、助けたかったのだという、愛情深い自分を受け取り直しましょう。
ふたつめは、ご主人を受け入れてあげようと思うこと。
K子さんはご主人にお父さんを投影することで、「すぐ怒る人」のことを理解できるようになっています。(理由は一つ目に書いてあるように)つまり、すぐに怒るご主人の気持ちもわかってあげることができるのです。
心理学では「すべてのネガティブな感情は、誰かを理解することに使うことができる」と考えます。これは、「心の痛みは誰かへの優しさに変えることができる」と言い換えることもできます。
些細なひとことで怒り出すぐらい、ご主人にとってはすべての人が敵に見えているのかもしれません。自分の妻ですら、そう見えているのだとしたら、どんな心の世界に住んでいるのでしょうか?
これはかつてのお父さんが住んでいた心の世界でもあるのですが、そこに安らぎと平和を与えにやってきたのが、K子さんという存在なのではないでしょうか。
ご自分が本当にしたいと思うことをご主人にしてあげてください。K子さんは怒りをぶつけたいわけではなく、心のやすらぎを差し出したい人なのです。

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