
愛した人との別れというのは、その人の人生に大きなインパクトを残します。そのインパクトは大きな傷跡であることがほとんどです。
傷跡があまりにも大きいとき、人生の時計が止まってしまうことがあります。私の古いクライアントさん(男性)にはこのような方がいました。(※ご了承を得て書かせていただきます)
1.心が折れると時が止まる

クライアントさんは結婚を前提として6年ほど彼女と同棲をしていました。当然のことながら、時期がくれば結婚するだろうと思っていました。
ふたりは同じ職場に働いていたのですが、ある時から彼女の様子が変だと思うようになりました。家に帰ってきても心ここにあらずで、なにを話しかけても目を合わせてくれないのです。
こういう時の嫌な予感というのは、男の勘であっても当たるものです。「もうあなたとは一緒に住めない。ごめんなさい。私は家を出て行く」と彼女が言い出したのです。
彼女は早々に荷物をまとめてふたりで暮らした家を出ていきました。残されたクライアントさんは突然のできごとに茫然とするしかありませんでした。
確信があるわけではないのですが、彼女にはどうも他に好きな人ができた様子。なんとかして彼女の気持ちを取りもどしたくてカウンセリングにいらしたのです。
クライアントさんを見た第一印象は、「ああ、心が折れてしまったな。まるで時が止まってしまったようだな」という感覚です。目には力がなく、ただ空をみつめているような痛々しい姿でした。
ただ彼女と同じ職場というのはあまりにもつらかったようで、クライアントさんはすぐに職場を変えました。
「どうしても彼女のことが忘れられない」と、声が聞きたくて電話をかけてしまうこともありました。迷惑そうにされるはわかっているのですが、どうしてもそうしてしまうのです。
まるで嫌われるためにやっているかのようでした。人は自分から嫌いになれないとき、まるで相手に自分を嫌わせるような行動を取ることだってあるのです。
前にも進めないし、後ろに戻ることができない。この時期はクライアントさんにとっては本当に地獄のような毎日だったと思います。
カウンセリングでは、失恋の傷を癒すセラピーや幼少期の生い立ちからインナーチャイルドのセラピーなどを取り入れながら、執着の手放しに取り組んでいた頃です。
クライアントさんは男性ですから、失恋しても涙を流すなんていうこともなかったのでしょう。泣くのはきっとセラピーの時ぐらいだったのかなと想像するのです。
2.時が動き出した瞬間

半年ほども経った頃でしょうか。ある日のカウンセリングで、「彼女が出て行ってから、部屋がかなり荒れてしまったんですよ。少し片づけないと…」と言い出したのです。
「少し片づけないと…」という言葉に、クライアントさんの心境の変化を感じました。
住んでいる部屋は彼女との思い出の場所。彼女が出て行った後も部屋の状況が変わらないとすれば、どうしたって彼女のことを思い出してしまうでしょう。
彼女が出ていったあとも、ずっと彼女との思い出と共に暮らしていたはずなのです。「ああ、別れを受け入れ始めたんだな」と思いました。
とはいえ、この片づけはなかなかはかどりませんでした。片づけようとすると割り込むようにして仕事が忙しくなるのです。片をつけようとすると片がつかない。まるで彼の心の抵抗を表しているようでした。
ある時のカウンセリングで「もういっそ、引っ越ししたらどうですか。そうしたら片付きますよね?」というと、「ああ、それもいいですね」と彼は少しだけ笑いました。
その言葉を最後に三ヵ月ほどカウンセリングにお見えにならなかったのですが、その後すぐ一週間後に引っ越しを決めたそうなのです。
ふらりと入った不動産屋さんで、「うん、なんかここ」と感じた場所に引っ越したというではないですか。
しかも引っ越したあとには、人生初の一人旅にも行ってきたというのです。かなり遠い場所までたったひとりで。今でもたまに落ちこむことがあるけれど、そんなときに決まって聞く曲があることも教えてくれました。
その表情を見たときに思ったのです。「ああ、ようやく時計の針が動き出したな」と。
3.失恋は生き方を変えるチャンス

失恋は生き方を変えるきっかけになります。
失恋直後にはそんなふうに思えないのですが、結果的には人生を変えるための素晴らしいきっかけにもなりうるのです。こんなときだからつけられる「踏ん切り」が人にはあるのでしょう。
だからこそ、泣くだけ泣いて心の回復の兆しが見えてきた頃に、こんなことを聞くことが多いです。
「今までやろうと思っていたけど、やっていないことってありませんか?今まで彼のために使っていた時間を使って、今度は自分のためになにかしてみませんか?」と。
だいたいは、「やっていないことですか?う~ん?」というような反応が返ってきます。しかし、しばらくすると考えはじめます。「こんな時期だからこそできることもあるのかもしれないな?」と。
私が今までお会いしたクライアントさん達の例でお伝えするとしたら、
海外旅行、国内ひとり旅、縁結びの神社巡りなどの旅系。
ジム、ヨガ、ジョギングなどのスポーツ系。
エステ、全身脱毛などの美容系。
メイクを習う、髪型を変えるなどのイメチェン系。
転職、資格取得などの仕事系。
ダンス、ボイストレーニングなどの発散系。
楽器を演奏する、ライブに行くなどの音楽系。
引っ越し、断捨離などの片づけ系。
英会話、お料理教室などのおけいこ系。
セミナー、ワークショップ参加などの心理学系。
…などいろいろありますが、こんなときに自分を救ってくれるのは、やはり「好きなもの」であることが断然多いです。
こんなふうに自分が弱ったときでないと、自分に好きなことを思う存分にさせてあげられない人も多いんですよね。
失恋をきっかけにして、ようやく自分にやさしくすることを学ぶ人も多いわけで、生き方を変えるチャンスでもあるわけです。
もちろん仕事に打ち込むことでこの時期を乗りきった人もいます。あまり好きじゃないと思っていた仕事にどういうわけだか救われて、失恋したら仕事がうまくいくようになったという人がいます。
だからこそ人生に無駄な出来事はひとつもないと思えるのです。たとえそれが失恋であったとしても。
もし今つらい思いをしている人がいるとしたならば、「今自分は変化の途中にいるんだ」と思ってほしいのです。
苦しみもずっとは続きません。あのクライアントさんもそうだったように、かならず立ち直れる日がやってきます。
大丈夫、あなたは必ず幸せになれますよ。
このお話がどこかでひとりで泣いている誰かのお役に立てればと願います。
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